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年のはじめと曲のおわり

楽曲の最終音というのは、どの作曲家もいろいろと頭をひねるもの。なかには、演奏家を惑わせる音符が書き込まれた有名曲も存在する。
不思議とそれはティンパニに多く(単に気がつきやすいだけかも)、個人的に気になっているのは、たとえば以下の3曲。

◆シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調op.47
最終音はソロとオーケストラ(木管は休み)が四分音符を打ち込んで締めくくる。その四分音符に(そのひとつ前の和音にも)、なぜかティンパニだけトレモロの指示がある。
ここはほかの楽器にあわせてティンパニも単音で処理するのが慣習化しており、それほど古い曲でないにもかかわらず、1946年のヌヴー&ジュスキント盤ではすでにこの形が採用されている。
ここを指示通りにやっているのは、テツラフ&ダウスゴーの知性派コンビ。ほかのパートがきっちり四分音符ぶんのばせば、トレモロする余裕は十分あり、不自然さはない。っていうか、このほうが終わり方としてカッコイイような…。
Sibelius: The Complete Works for ViolinSibelius: The Complete Works for Violin
(2002/10/25)
Jean SibeliusThomas Dausgaard

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◆シューマン:交響曲第2番 ハ長調op.61
最終音はトゥッティで全音符のフェルマータ。と思いきや、ティンパニだけ二分音符ふたつがタイでつながれ、一つめの音に対してトレモロの指示が書いてある。
ほかのパートが伸ばしているあいだティンパニは二分音符ぶんトレモロをして打ち止め、ということなんだろうか。そのように実践しているのは、シノーポリ指揮のドレスデン盤。
ただ、これは音友のスコア(=フィルハーモニア版)の話で、オイレンブルクのポケットスコアを見ると、二つめの二分音符までトレモロがかかっている…うーむ、このへんの事情に詳しいかたがいたら、ご教示を賜りたいものです。
シューマン:交響曲全集シューマン:交響曲全集
(2001/09/21)
シノーポリ(ジュゼッペ)

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◆ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調op.67
これも最終和音はトゥッティで全音符にフェルマータ。でもティンパニだけが、二分音符ふたつで、ひとつめには三十二分音符の刻み(いわゆる「ひげ」が三本ついてる状態)、ふたつめにはトレモロの指示。
これはあきらかに楽譜がヘンで(プレストのテンポで三十二分とトレモロの区別なんかつかない!)、ブライトコプフ旧版であったこの指示は、最近のベーレンライター新版なんかでは全音符にトレモロという形に直されている。ちなみにこの指示を深読みして(?)、上記シューマンのように和音の途中でトレモロを打ち止めという形で処理したのが、アーノンクール指揮ヨーロッパ室内管。
Beethoven: Symphonies Nos. 4 & 5; 'Egmont' Overture [United Kingdom]Beethoven: Symphonies Nos. 4 & 5; 'Egmont' Overture [United Kingdom]
(2003/04/15)
Ludwig van Beethoven、

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年末の風物詩

いまや完全に年末の風物詩となった感のあるベートーヴェンの「第9」。今月はどこのオーケストラの公演をみても「第9」一色でありました。

とはいえこの習慣は日本だけのもののようで、たとえばケルン放送響で長らく活躍されていた宮本文昭さんは、在籍中一度も「第9」を演奏する機会がなかったとか(ちなみに長野五輪での演奏が彼にとっての「初体験」だったらしい)。

閑話休題。「第9」の聴きどころはたくさんあるけど、個人的に好きな箇所を挙げるとすれば、第3楽章の中ほど、弦楽器のピッチカートを伴奏にcl×2+fg+hrが四重奏(途中からflが加わる)する部分(楽譜では、83小節目からの16小節間)。
この楽章はご存知のとおり、アダージョ・モルト・エ・カンタービレ(変ロ長調4/4拍子)とアンダンテ・モデラート(ニ長調3/4拍子)の2つの主題からなっていて、それが交互に登場しそのたびに変奏を重ねていく。
上記箇所は、2度目のアンダンテ・モデラートがト長調で奏されたあと。また1つめの主題に戻るのかと思いきや、変ホ長調に転調して(拍子とテンポは元に戻る)、管楽器4本が主題の断片をポリフォニックにやりとりする。森の中を散歩していたら突然霧に身を包まれ、周囲の視界が遮られてしまったような趣。
するとおもむろに角笛が聞こえてきて(hrのアクロバティックなパッセージ)、今度こそ変ロ長調になり、第一ヴァイオリンが翼を広げて飛翔するかのごとくのびのびと主題を歌う――夢とも現実ともつかぬ情景。

ちょっと妄想めいたことを書いてしまったけれど、たしか映画『敬愛なるベートーヴェン』でもベートーヴェンが森の中を歩くシーンに第3楽章(ただし冒頭部分)が使われていたはず。監督のアニエスカ・ホランドも同じようなことを頭に思い描いていたのかも…。

ベートーヴェン:交響曲第9番ベートーヴェン:交響曲第9番
(1999/10/01)
キャラタイ(マリー=ノエル・ド)クローゼ(ミラ)

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アニマ・エテルナ/指揮:ジョス・ファン・インマゼール
第3楽章を目当てにするなら、この演奏がお気に入り。エリック・ヘープリチのクラリネットが美しい。全体的にみても、ピリオド楽器の小編成オケとは思えないほど立派な鳴りっぷりが耳を惹く。ティンパニの気合いの入り方も半端じゃなく、ベーレンライター新版で採用された第2楽章195小節以降のノンディミヌエンドも痛快なまでに実践。ただ、残響多めの録音が好悪を分かつか。

ベートーヴェン:交響曲第9番ベートーヴェン:交響曲第9番
(2002/06/26)
ガーディナー(ジョン・エリオット)モンテヴェルディ合唱団

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オルケストル・レヴォシュリョネル・エ・ロマンティク/指揮:ジョン・エリオット・ガーディナー
テクストや楽器やテンポ等々のオーセンティシティがどうこうではなく、単純に声楽陣(独唱も合唱も)の優秀さゆえに高く評価されるべき演奏。技術的にここまで穴のない水準で聴ける「第9」はそれだけでも貴重。

Beethoven: Symphony No. 9 Beethoven: Symphony No. 9 "Choral"; Schoenberg: Survivor from Warsaw
(2000/06/06)
Sherrill Milnes、

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ボストン交響楽団/指揮:エーリヒ・ラインスドルフ
モダン・オーケストラで聴く「第9」としては、技術的にみて最高レベルの演奏。オーケストレーションの大胆な改変(たとえば第2楽章主部)と「原典主義的」なテンポ設定(終楽章コーダのマエストーソ!)が同居したスタイルは、現在の視点でみれば新鮮でもある。切れ味抜群のスケルツォは今なおこの楽章のベスト演奏(E・ファースのティンパニが凄い)。録音も1969年とは思えないほど優秀。

ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調Op.125「合唱」 [Import]ベートーヴェン:交響曲第9番ニ短調Op.125「合唱」 [Import]
(2006/02/15)
ベルト・ミンチュク

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サンパウロ交響楽団/指揮:ロベルト・ミンチュク
過去の記事をどうぞ。

健全なる精神に…

シューマン:交響曲第2番シューマン:交響曲第2番
(2006/12/20)
フランクフルト放送交響楽団 インバル(エリアフ)

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ロベルト・シューマンの楽曲は、熟慮と推敲を重ねたうえの産物ではなく、閃きや即興を一筆書きに展開させていったうえのそれに聞こえる。実際の作曲過程など知るはずもないけれど、つまりは彼の音楽じだいがそのような魅力を宿しているということなのだと思う。
だから、作品ごとの出来不出来の差はけっこう激しい。でも、ひとたびハマれば、まるで神が宿ったかのごとく天才的な筆致を示す。そう、たとえばシンフォニーなら、「第2」の終楽章。

この楽章(ひいては作品全体)についてはむかしから、ずいぶんな言われかたをされてきた。いわく、形式が破綻しているだの、精神病の産物だの…
でもそれは、「常識的な」ソナタ形式の枠組みからとらえてしまうから。それではシューマンの独創的な着想を看過してしまうことになる。

おおまかな構成をまとめてみよう。
【呈示部】
○第一主題…1オクターブの上昇、そして付点音符をともなった音型へとつながる活発な主題
○第二主題…弦の走句、木管の三連符につづいてあらわれるおおらかな主題(第3楽章の回想)
【再現部&展開部】
ふたたび第一主題が登場、その後展開を重ねる。第二主題はクラリネットが反行型を吹く。
ここをたんなる展開部として、つづく再現部がまるまる長大なコーダに置き換えられている見ることもできる。いずれにしても、この楽章なかばにして、通常のソナタ形式は役目を終え、曲は全体を統合して総括する終結部へと突入していく。

【コーダ】
○オーボエにより美しい「感謝の歌」(by前田昭雄)が奏される。
○第一主題が再登場し、展開される。全合奏による終止。
○弦楽器によりふたたび「感謝の歌」。確信を深めたこの主題は、ここで第一楽章冒頭の金管のモチーフをしたがえる。すると今度は同じく一楽章の序奏であらわれた木管のパッセージが再帰、そして「感謝の歌」が木管と弦のカノンになると、そこにいよいよ前述の金管のモチーフが威厳をもって吹奏され、音楽はついにひとつになって…

ううむ、こうして書いてみるとなんだかもどかしい。
興味のあるかたは、スコアを片手に前田昭雄の『シューマニアーナ』(春秋社)を一読されることをおススメします。

さて、上記に挙げたインバル盤。弦楽器を分厚く鳴らしながらも常に見通しがよく、スコアに手を入れていない(たぶん)演奏では最上のひとつ。上記のカノンから金管のモチーフが重なるところのバランスなど実に見事で、何度聴いてもしびれる。

ヤンソンスのチャイコフスキー

チャイコフスキー:交響曲第4番、ピアノ協奏曲第1番チャイコフスキー:交響曲第4番、ピアノ協奏曲第1番
(2007/10/24)
ヤンソンス(マリス)

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バイエルンとコンセルトヘボウという2つの名器を手にして精力的に活動を続けるヤンソンス。
前者を振ったチャイコフスキーの「第4」(2005年のライヴ)。マゼール時代にベルリン・フィルもかくやと思わせるほどのヴィルトゥオーゾ集団と化した楽団を相手にヤンソンスは、もはやアンサンブルの面倒を見なくてもいいのならとばかり、随所にわたって演出をほどこす。とりわけダイナミクスをけっこういじっていて、同じ音型がくり返される個所で一度ピアノに落としてクレッシェンドする流儀は、ちょっと鼻につく。

全体としては、やや力で押し切ったような演奏か。オケのポテンシャルは申し分なく高く、第2楽章冒頭のオーボエ(シュテファン・シッリ?)など傾聴に値する吹きっぷり。
ただ、オスロ時代のヤンソンスはもっと端正な音楽作りを志向していたように思うんだけど…。

ティルソン・トーマスの「田園」

Beethoven:Symphony No 6Beethoven:Symphony No 6
()
Tilson Thomas:Eco

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マイケル・ティルソン・トーマス指揮イギリス室内管による田園交響曲。室内オケによる初(だったはず)のベートーヴェン交響曲全集のなかの一枚。
以前入手した「エロイカ」が素晴らしかっただけに、ここでも小編成の機動性を生かした小気味よい演奏を期待したけれど、録音のせいかあまり冴えない印象。個人的に好きな指揮者だけにちょっと残念。
ヴァイオリンを対向配置にした効果はけっこう出ていて、ヴィオラの動きなんかはいつになくよく聞こえる。